2010年10月25日

キリしゃんの蕎麦

そばうち
残りわずかな中津江村で過ごす時間は、大切な時間。
それより何より
89歳のキリしゃんと過ごす時間は、かけがえのない時間。




そばうち2きりしゃんのそば
キリしゃんの蕎麦

大分県日田市中津江村一番の元気もん「キリしゃん」こと、
片桐キリヨさん(89)に蕎麦打ちを習いに行った。

習う私たちは、神奈川、大分、福岡出身のよそ者3人組。
自宅を訪ねるとキリしゃんは、蕎麦ではなく団子をのばしている。
「おなかが減ったら蕎麦打ちはできんやろ」とのことで、
まずは団子汁づくり。

腹ごしらえのあと「たきつけは杉の葉で、竹と薪をこんな風に組みなさい」と火おこしを教えてもらい、大釜で湯を沸かす。
山水に竹のといを渡し、そばを締める水場をつくる。
天然のシステムキッチンが調った。

「近所の人が私の蕎麦が好きでね。今日は親せきも来るからたくさん作ろう」。
嫁いだ時からあったという100年来の樫の麵棒で、手際よく蕎麦をのばしていく。
御利益のある観音様の話、かわいがってもらった舅さんの話などを聞きながら4人で50人前を打った。
キリしゃんの蕎麦打ちにはレシピもコツもうんちくもない。
そこにあるのは、89年の生き様である。そうしてできあがった蕎麦は、甘く、やさしい味。来年も再来年も、長生きして教えてね、キリしゃん。私たちが受け継ぎます。(森千鶴子)

(西日本新聞夕刊コラム潮風 2010年10月23日号に加筆)




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