DSC_7174ボクが海のシゴトをしていた時
ある初老の漁師と酒宴で隣になった
「ヤスナガ、俺たちは魚を獲りよると思うとろ。
俺たちは魚を作りよると。わからんめえ。
なんで鐘崎の魚が市場で売れよるとか考えてんしゃい。
シゴトたい。釣り上げてからセリにかかるまでが違うと。
釣る技も要る。ばってん、このシゴトが要ると」
牛の寿命は、たぶん二十年以上と思う。
ボクのいる牧場では、
ホルスタインの場合は、17~18ヶ月
ホルスタインと和牛の交雑種の場合は、24ヶ月前後で牛肉に変わる。
おそらく、他の牧場の高級和牛でも30数ヶ月だと思う。
効率が最も重視される酪農(搾乳)のギガファームでは、
多くの場合30~40数ヶ月でミンチ肉に変わる。

肉牛は出荷前、自らの体重と些細なアクシデントで起き上がることが出来ない時があ
る。
その時は、牛肉になる前に肉牛として廃棄処分になる。
草食動物である牛は、肉食動物からの攻撃を避けるために長い時間の熟睡という遺伝
子を持たない。
短い数分の睡眠を重ねるだけである。
反芻を終え横たわった時、例えば牛舎を仕切る金具の真下に頭があった場合
短い睡眠から目覚め起き上がろうとする時
その金具が起き上がることの邪魔になり、自らの重みで死んでしまう。
自らの行動では、この困難を克服する手段はない。

牧場では、昨春から午前3時からの早出出勤を二名でローテーションで行っていた。
この見回りで数頭を救うことが出来た。
しかしながら、今朝も出荷前の肉牛が死んだ。

今日、牧場では早出出勤から夜勤出勤への変更が行われた。
今後はローテーションで、21時から翌朝5時までの勤務体制をつくる。翌日は休日とな
る。

英語では家畜のことをLive Stockと言う。
いつでも命を貯めておけるモノ。
それを技術と努力により芸術的な牛肉にかえる。
それがニッポンの畜産。ここにいる牛は、野生のバッファローや、昔の農耕牛とはまっ
たく別物である。
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