餅つき写真は、父と母ともりち。妹夫婦が撮影してくれました。年末に餅つきをしたときの写真です。実家のいちごの選果場が会場。
親子の記憶

 母に出産の時のことを聞くと、つらい思い出ばかりだと教えてくれない。

そして「働くばっかりで、あんたたちには何も手をかけてないけんね」と言う。それを聞いて妹が母のお腹にいたときの事を思い出した。

当時私は4歳。縁側で遊んでいると、大きなお腹を抱え、汗だくの野良着を着た母が来て「お母さんは赤ちゃん産みに行ってくるけんね。おりこうさんにしとかなよ」と言う。やさしい口調の中にも、これから出産に臨む母の決心が見えて、私は「うん、わかった。」とはっきり言った。今思えば母は臨月の、出産の直前まで父や姑と一緒に働いていたのだろう。

 そんなある日、母が私に言った。「あんたは私がお産に行くとき、あと追いもせんで『うん、わかった』って。聞き分けがよかったねぇ。」ああ、母も覚えていたんだ。生まれてくる妹を迎えるために、私たち親子は気持ちをひとつにしていた。そしてその記憶を大事に持ち続けていた。

 今、里帰り出産のために帰省している妹は、臨月を迎えている。お母さん、私たちはしっかり愛されて育ちました。だから心配しないで。妹もしっかり頑張れます。

(西日本新聞夕刊コラム「潮風」2012年1月14日号に掲載したものを加筆修正)